日本各地の子どもたちが育て、東京2020オリンピック・パラリンピック大会の各会場を彩ってくれた朝顔たちを覚えているでしょうか?「フラワーレーンプロジェクト」として会場内に設置された朝顔たちは、無観客で開催される中、お客さんたちの目にとまることはほとんど無かったけれど、選手・関係者そして私たちボランティアたちにはその優しさとおもてなしの心はしっかりと届いていました。
大会終了後、朝顔たちは子ども達の元に無事戻り、たくさんのタネを残してその一生を終えました。そんな「オリパラ朝顔」のタネの一部をハロー・ボランティア共同代表のたるみんが偶然にも学校関係者からいくつかわけていただき、その一部を同じく共同代表のさわけんの自宅で育ててみたところ、たった11個のタネから3ヶ月間でなんと1906輪、最終的には1932輪もの朝顔が花開いたのです!
※朝顔の開花数って何分布なの?グラフは正規分布で作ってみたけどなんかいまいちフィットしてない気がする‥‥
毎日の水やりだけでなく、摘芯と呼ばれる剪定作業や咲いた花のカウント等、手間はかかったけれど、毎朝ベランダで過ごす10分間は、まるでモーニングコーヒーのように心をリフレッシュさせてくれました(集計作業なんてしなければ1分もかからない水やりだけで終わります)。毎日毎日こんなにも多くの花をつけるなんて、全然知らなかった‥‥
せっかくなので雰囲気を醸し出すために、普通の鉢植を使わずに、小学校と同じプラスチック製の鉢植えで育ててみました。朝顔はツル性の植物。この朝顔観察用の植木鉢はうねうね伸びて朝顔のツルが絡みつく場所をワンストップで提供してくれる優れものでした。
そして1932輪の花から回収されたタネは実に1000粒以上となり、もう自分だけでは育てられない量となりました。「私も来年オリパラ朝顔を育ててみたい」という方がいたら喜んでお譲りします(先着100名限定・郵送は非対応・都内のどこかで手渡し)。欲しい方は下記アドレスまでメッセージ下さい。
朝顔の育て方はネットを検索すればたくさん出てくるのですが、情報の網羅性がいまいちで、かなり苦労しましたので、ここに必要な情報を全てまとめておきます。オリパラ朝顔の3世、4世を育てていく際の参考になれば幸いです。
種を入手したら、植える時期を決めましょう。夏休みの間に満開にさせたかったら、5月末には植える必要があります。実際5月末に植えたオリパラ朝顔2世の初開花は7月22日。もう少し早く植えれば7月の早い段階から朝顔の花を楽しめると思います。
前日の夜にタネの背中に軽くヤスリ(爪切りのヤスリでOK)で2~3往復ほど擦っておきます。背中というのは、アサガオの種はよく見ると三日月やミカンの房のような形をしていて、丸く弧になっている方を背中と称しています。タネの背中を擦っておくのは、厚くて固い皮を少し薄くして発芽しやすくするために行うものです。ネットの記事では発芽しない「ハズレ」のタネがあるため1ヶ所に3粒ずつ植えるといった説明をしている場合があるのですが、こうして前処置を施しておいたタネの発芽率はほぼ100%でした。そしてもうひとつ。これらのタネを撒く前にひと晩水に漬けておくと完璧です。
小学校で使った観察用の植木鉢程度の大きさだったら、3株くらいまでは育てられます。植木鉢に土を入れ、均等に分散させて植えます。3ヶ所の場合は時計の12時・4時・8時の位置に2cmほどの深さの穴を作り、その穴にタネを入れたら優しく土をかぶせましょう。この時、タネの向きに気を付けて下さい。背中側(ヤスリで擦った側)が上になるようにしてタネを置きましょう。
発芽率にもよりますが、不安なら、穴1ヶ所につき2~3粒のタネを撒いてもOKです。ただし同じ穴から複数生えてきたら、1株だけ残して残りは摘んでしまいましょう。
水はたっぷりあげて下さい。たっぷりというのは、水をあげて植木鉢の下からその水が滴り落ちてくる程度です。結構な量になります。土を触って乾いていたらこの水あげの量を基本に水をあげて下さい。土が湿っているようなら水は不要です。
土は「赤玉土5・堆肥2・腐葉土2・くん炭1」といったような複雑な混合土にする必要はありません。ホームセンターなどで売っている「花用」の培養土をそのまま使えばOKです。「花用」の培養土を使っておけば、植木鉢の下に石を敷き詰めたり肥料を入れたりと、複雑なこともせずとも立派に育ちます。
タネを植えてから早ければ数日で、遅くとも2週間程度もすれば双葉が地上に芽を出します。その後どんどん背を伸ばして成長していきます。このままどんどん成長させれば良いと思ってる方、実は違います。次の「摘芯編」で詳しく説明します。
小学校で朝顔育てた時は一切やらなかったけれど、朝顔育てるうえでほぼ必須とも言える作業に摘芯(摘心)があります。アサガオはツルがニョロニョロ延びるタイプの植物です。このツルというのはとにかくツルを先へ伸ばそう伸ばそうとする性質(頂芽優勢)があり、放置しておくとただただ長く伸びるだけで花がほとんど咲かないという事態に陥ってしまいます。そうならないように敢えてツルの先端を切り落としてしまうのが摘芯です。摘芯された朝顔は、その成長パワーが他の芽に回されることによって、全然違うところから芽が伸びてきます。こうすることによって、通常1本しか出来ないアサガオのツルが、枝分かれして何本もの支線ができ、それぞれの支線に花が咲くので花の数が桁違いに多くなります。「尖端を切ってしまうなんて少しかわいそう」と思わず、躊躇なく思い切って摘芯することを強くオススメします。
摘芯するタイミングは、ツルが伸びて葉が7枚くらいつけたタイミングでやると良いでしょう。先端を挟みで切るだけでOKです。
朝顔はどんどん伸びて枝や支柱に絡みつきますが、はっきりいって自然の朝顔さんはあまり頭良くないのでとんでもない絡みつき方してきます。なので、早いうちにいい感じで巻き付くように手で誘導してあげましょう。
具体的には、小学校で使っていたような3本の支柱とリングがあるタイプの場合、支柱を這わせてリングに到達したらリングを1周させ、元の支柱に戻ってきたらもう1段上のリングまで登らせてまた1周といった具体です。結構な距離になるので、適度に摘芯して枝が複数できたらあとは摘芯サボって伸ばし放題でもOKです。ただし一番上のリングまで到達してさらに1周までしたら尖端は切り落としてしまいましょう。あまり伸ばし続けると開花量に影響してしまいます。
朝顔が良く育ち、たくさんの花をつけるには適切な肥料を与える必要があります。使用している培養土自体に豊富な栄養分が含まれているでしょうから、それほど気にしなくても良いのかもしれませんが、ブーストかけるなら肥料を使いましょう。固形の肥料などもありますが、液体肥料の定番「ハイポネックス」がオススメです。
約500倍に薄めて使うので、2リットルのペットボトルにキャップ0.5杯分のハイポネックス原液を入れて水やりすればOKです。頻度は7~10日に1回程度でOK。与えすぎだと逆に花が咲かなくなって葉っぱだらけになる「つるぼけ」と呼ばれる状態になってしまいますのでご注意下さい。
100円ショップなどにペットボトルのフタの代わりにつけてジョウロとして使えるようになり便利グッズが売ってますので、これを利用すると便利です。
アサガオには「いも虫」がつくことがあります。葉っぱが食べられ周囲に黒いフンが散乱している場合、エビガラスズメというガの幼虫が隠れている可能性が大です。葉の裏にいるので見つけたら除去しましょう。
花は前日の夜に蕾となり、早朝に開花します。その日の夜にはしぼんでしまうので1日しか咲きませんが、毎日次々と開花する様子を楽しんで下さい。しぼんだ花を摘まむかどうかは人それぞれのようです(しぼんだ花に無駄な栄養がいかないようにするためだそうです)。さわけんは開花数を計上する必要があったため夜には摘まんでいました。面倒ですし、花を摘まむというのは意外と精神的にキツイので、するorしないはお任せします。
朝顔がタネを付けるには雌しべに雄しべの花粉がつく「受粉」をしなければなりません。朝顔の場合、同じ花の雄しべの花粉が雌しべに付着する「自家受粉」と呼ばれものなので、花の成長過程で自動的に受粉すると思いますが、時間のある人は綿棒か何かで強制自家受粉させても良いかもしれません。
ちなみに、オリパラ朝顔2世の場合、花の色は、赤・ピンク・青・紫の4種類で、縞模様や円環模様などの特殊パターンは出現しませんでした。生物学的に意味があるのかわかりませんが、異なる色の花の花粉を受粉させてたりしてましたので、第3世代がどのような色の花をつけるのかとても楽しみです。
花が咲いたあと、ガク(花を支える部分)が膨らみタネが出来ます。必ずできるわけではなく、オリパラ朝顔2世を育てたときは、タネが出来る確率は10~20%程度でした。時間経過とともに色が茶色に変色してきますが、あまり放置し過ぎると、タネが弾け飛んでしまうので、ガクの部分が放射状に180度以上に反ったタイミングで収穫しましょう。
収穫したタネはしばらく置いて乾燥させると良いでしょう。最終的には殻を割って中にある黒いタネを取り出します。タネの個数はまちまちで1個のときもあれば、最大で8個入っているときもあります。
アサガオのタネは必ずしも翌年に撒かなければいけないということはなく、数年持つと言われています。自分で育てきれない位のタネが採れると思いますので、友人・知人にプレゼントすると良いかもしれません。
東京2020オリンピック・パラリンピックのフラワーレーンプロジェクトとして花開いた朝顔のタネという「もうひとつのレガシー」が少しでも長く続くことを切に願っています。
朝顔さんありがとう。最初に育ててくれた子どもたち、みんなありがとう。