さわけんです。今でこそ、周囲から「あいつは英語がペラペラ」と言われるようになった私ですが、学生の頃は全く英語を喋れない人でした。
でも、英語そのものは本当に大好きで、大学受験の高校3年生の時には周囲が「でる単」「ターゲットシリーズ」のような市販本で語彙力を増やすべく奮闘している中、私は辞書を一冊丸ごとAからZまで全て覚えていった位、英語を苦痛と感じたことはありませんでした。当時の語彙力はゆうに1万語は超えていたと思います。おかげ英語の配点が高かった大学受験は非常に楽勝でした。そんな英語を得意科目にしていた私だったのですが、いざ「英語を喋る」となると、なぜかとたんに手も足も出なくなってしまうのでした。
スピーキング苦手‥‥それは大学生活で変わることなくそのまま卒業。こんな状態で新社会人となったわけですが、入社した会社の社長が「これからはグローバルだ」と言い始め、多額の予算を投じて、新入社員全員に1ヶ月間の英語研修を課したのです。そこで出会ったのが(株)パンネーションズ・コンサルティングが提供する「パンネーション・メソッド」と呼ばれる英語学習法でした。
この「パンネーション・メソッド」は今から考えると、グロービッシュ(Globish)やベーシック英語(Basic English)と呼ばれる、英語を母語としない外国語としての学習法もしくは会話法そのものであり、特に目新しいものではありません。英語研修初日に「お前らにこれから15分やるから、○○について英語で議論してみろ」と講師から言われ、15分間もの長い長い地獄のような沈黙タイムを過ごさざるを得ませんでした。そんな私たち新人同期10名が、1ヶ月後、同じ様に「英語で議論してみろ」と言われたとき、自分含めて全員が喧々諤々の議論を英語で交わしていた姿を目にした時は「衝撃」以外の何物でもありませんでした。
この「ハロボラ★Space 第2弾」では、そんな魔法のような英語メソッドを参加者のみなさんにお伝えする場となります。もちろん、英語は語学ですから、たった1時間のセッションでただちにペラペラになる‥というわけではありません。早い人で1ヶ月、遅くとも3ヶ月程度でペラペラになるために必要な考え方やコツ、そして練習法をお伝えする場が、この「ハロボラ★Space 第2弾」です。
最初に、参加者の方たちの様々な経験から生まれた英語の必要性について今一度見つめなおし、自分自身の英語のゴールはどこかを再確認してもらいました。しばしばマラソンに例えられる英語学習ですが、ゴール無きマラソンは苦痛以外の何物でもありません。参加者のうち誰ひとりとして米国で弁護士になりたいとか、大衆の前で大演説したいといった人はいませんでした。ビジネスやプライベート、そしてボランティア活動中に、日本語がわからない英語話者と違和感なくコミュニケーションする事が当面のゴールである事を再確認。こうして、英語学習のゴールは意外と近いものであり、そこへ到達するのは思っているほど難しいものではないという意識を共有しました。
このセッションの最大の肝となる部分がこの「100点満点をあきらめる」です。ここでひとつ問題を出しました。「人の叡智を集めた最先端の技術によって作られた超高機能なスマートフォンをあなたは持っているとします。
I have a ○○ smartphone.
さて、この○○に当てはまる形容詞を答えて下さい」。あなたならなんと答えますか?
みんな、頭をひねりながら「何がいいかなぁ」「なんて言ったっけなぁ」と悩んでいます。そうこうしているうちに30秒の時間が経過しました。みんなの口から出てきた形容詞は「smart」「nice」などでしたが、中にはまだ悩んでいる様子の人もいます。
ここで意味的にもベストだと思われる形容詞をひとつ「模範解答」として紹介。「あぁこれね」という反応した人もいれば「え?そんな形容詞知らないんだけど」と戸惑いの表情を浮かべる人も。しかしこのセッションはそんな100点満点な形容詞を覚えましょうという場ではありません。皆さんに次のように伝えました。
こんなの「good」で良くないですか?模範解答が100%伝えたい事を伝えられたとして、goodでは何パーセント気持ち伝えられてますか?少なく見積もっても80%は伝えられてますよね?だったらこれで良くないですか?沈黙の時間もなく即答する80点の英語と、30秒以上の沈黙の時間を経てようやく出てくる満点に近い英語。どちらが望ましいですか?
沈黙時間を無くすために、難しい英単語や表現を思い出せないと思ったら即座にやさしい英語、つまり中1レベルの英語で表現する訓練をしていきます。辞書というのは難しい単語をやさしい単語のみで表現してその意味を説明する書物ですが、まさにそれを自分自身の頭の中でリアルタイムに行うわけです。例えば、nephewという英単語があります。これは甥(おい)という意味で、自分の兄弟の子供の事を指すのですが、この単語はちょっと難しく、すぐに出てこない。そこですかさず「son of my brother」と言い換えるといった具合です。
出川哲郎がアメリカの街に放置され、たどたどしい英語ながらも、街の人々に話しかけ目的地まで辿り着くまでを追う、日本テレビ系列の「世界の果てまでイッテQ」の人気コーナーで「出川イングリッシュ」という言葉が新しい日本語として確立した感があります。英語があまり喋れなくとも失敗を恐れずに「当たって砕けろ」精神で次々に難題を解決し、ゴールに突き進む姿は、英語に対して苦手意識がある人たちに対してある種の希望を与えていることと思います。しかし、今回は「出川イングリッシュで大丈夫」とはならないよう注意喚起をしました。
英語には、日本語の助詞に相当するものが無く、単語の格はその単語の位置、つまり順番で決定します。例えば、I love youという英語はこの順番(I+love+you)でのみ意味を成すものであり、love I youとかI you loveでは全く意味が通じません。日本語の場合は、助詞(て・に・を・は)が単語とリンクして格を決定しているため、
どのような順番で言っても意味は通じてしまいます。しかし英語はそうではありません。
出川イングリッシュがなかなか通じないのは、決して彼の語彙力が少ないからではなく、単語の順序(語順)が崩壊しているからに過ぎません。ひとたび語順が崩れてしまうと、そこの登場する単語ひとつひとつの意味は理解できても、文としての意味が全くわからなくなる‥‥それが英語という言語の特徴なのです。ですのでしっかりと英語構文(いわゆる英語基本5文型)をおさらいして、語順を意識する事をお伝えしました。
東京2020大会の前に、日本財団ボランティアサポートセンターから東京2020ボランティアを対象に「英会話タイムトライアル TOKYO VOLUNTEER 2020 特別編」が無料配布されたのをまだ覚えてますか?これはNHKラジオの英語講座「英会話タイムトライアル」のエッセンスをボランティア向けにカスタマイズしたテキストで、NHKラジオ講座自体は毎日放送されているものです。
このテキストの中を読むと、ボランティア活動中に遭遇しそうなシーンをいくつもあげ、そこで使われる英会話表現を列挙したよくある会話集のように見えるのですが、この「英会話タイムトライアル」の真の狙いは会話表現をたくさん覚える事ではありません。
NHKの公式サイトにはこのように書かれています。「中学レベルの単語・表現を使った1日10分×週5回のトレーニングで日常会話をテンポよく行うことを目指します」。そして、TOKYO VOLUNTEER 2020特別編には以下のような説明文を見ることが出来ます。
これは、まさに今ここで説明している「やさしい英語で素早く喋ること」と同じコンセプトに基づいた教材なのです。もしここまでの説明を読んで「なるほど、やさしい英語でテンポ良く話す‥‥無限とも思える大量の会話パターンを一生懸命覚えるよりは英語学習の当面のゴールとしてはこっちがいいかな?」と共感していただけたのであれば、NHK英会話タイムトライアルに挑戦してみる事をオススメします。
まとめとして、今後の英語学習の進め方について解説しました。まずはみんなで中1~中2レベルのやさしい英語を駆使して、沈黙する事なく、淀みなく、違和感なく英語を喋れるようになる事を目指します。これが出来た時、英語が喋れない人から見れば、あなたは既に「英語ペラペラ」に映るのです。でも、その喋っている内容をよ~く聞いてみると、なんてことはない、非常に平易かつ単純な英語しか喋っていないわけです。これがどれくらい簡単な英語かというと、英語圏で生まれ育った2歳・3歳の幼児が喋る英語と同レベルと考えてよいでしょう。でも、幼児の英語とはいえ、ちゃんと相手とコミュニケーション出来ているんですよ。この状態こそが、私たちのような英語を母語としない大人の英語学習のスタート地点にふさわしい‥‥それがこの英語学習法の基本的な考え方なのです。
そして、この先の長い人生の間に、様々な単語や表現に出会う事になるでしょう。日本語を学習する過程がそうであったように、英語もまた、読書や動画等を通して、時には会話の相手から教えてもらったりしながら、遭遇した新しい表現の意味を知り、いつしかその表現を自分自身で使ってみる。そして通じる。まさにこの瞬間こそが、新たな表現が自分のものとなり、英語力のレベルがひとつ上がった瞬間なのです。
最後に少し時間が余ったので、スピーキングではなく、リスニングの方の話、つまり英語の音の話をしました。これは英語系YouTuberの「だいじろー」さんが動画の中で説明していたことなのですが、日本語は語数が拍数と一致しています。「ネコがネズミを食べる」は10拍。文頭に「その」を追加したら2拍増えて12拍で発音します。
ところが、英語は「Cat eats mouse」を3拍で発音します。そしてこれに「a」や「The」などの冠詞が「will」などの助動詞が追加されても3拍なのは変わりません。じゃぁ追加された語はどこへ行くかというと、拍と拍の間、いわゆる「裏拍」のところで弱く発音されます。これを5拍や6拍で発音していたらいわゆる「ジャパニーズイングリッシュ」っぽくなってほとんど通じません。なぜなら英語話者は「Cat eats mouse」でも「The cat will eat a mouse」であっても3拍のリズムを期待しているからです。
こうしたリズムや強弱を体得するには、英語学習でよく言われる「シャドーイング」だけでなく、もう一歩先を行った「モノマネ」をしてみることをオススメします。セリフのトーン、イントネーション、リズム、強弱。それらを全てをモノマネしてみて下さい。あなたの英語の発音は劇的に良くなると思いますし、驚くことにリスニング力も同時に大幅に向上すること間違い無しです。
駆け足で説明すること約1時間。いくつか質疑応答を交わして、パリ2024大会だけでなく、WBCや世界水泳、デフリンピック、大阪万博と、様々な国際ボランティアの機会が巡ってくるまでに、英語を自然に喋れるようになっておいて、ボランティア活動を自信を持ってできるようになってるといいですね!とみなで願ってFINISHとなりました。